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裁判年月日 昭和50年 3月18日 裁判所名 東京高裁 

事件番号 昭49(行ケ)100号

 

一、本願商標は世上ゆきわたつた氏姓「毛利」の片仮名表示として認識され、商品出所識別機能に欠けるとした審決の判断に誤りがあるとする原告の主張は、これを検討しても、理由がないものといわざるを得ない。

 

二、まず成立に争いのない乙第一号証の一から三までによれば、東京二三区内五〇音別電話番号簿に各区にわたり、本願商標の指定商品をふくむ各種職業におよんで「毛利」の氏が四百数十も存在することが認められ、この事実にてらせば、「毛利」という氏は、わが国にひろくゆきわたつて存在する氏の一つであることが明かである。また、成立に争いのない甲第六号証の一から三までによると、東京二三区内の企業別電話簿上に、「モーリ」をその頭部に冠する企業名が約十前後存することが認められるが、これも「毛利」の片仮名表記を推測させるものといえないことはなく、「毛利」氏の一般的な遍在性・著名性を減殺させるものとはいえない。

 つぎに「毛利」の片仮名表示は「モウリ」であるから、「モーリ」は「毛利」の片仮名表示とはならないと原告は主張するが、「モウリ」の「ウ」も「モーリ」の長音符「ー」も、音声現象を記載する長音記号としては同一であつて、ただ永年の慣例から「オ」列の長音を記載する場合に現代かなづかいとして「う」を常用とするに過ぎず、「モウリ」も「モーリ」も特に名詞である「毛利」の片仮名表示として認識・使用される点にかわりはない。

 さらにまた原告は、「モーリ」は「網利」「盲理」「母理」を連想させるというが、いずれも日本語として熟した単語または複合語とは認められず、また「もりもり」からの連想というのもあまりに飛躍があり、いずれも本願商標のそなえるべき観念として検討に値しないものである。

 しかも本願商標は「モーリ」の片仮名文字を一般に用いられる書体で横書した以外、なんら特別の構成をそなえていない。

 そして日本人の氏姓も、日常これを表現する手段として特に商取引等に用いる際には片仮名・平仮名・ローマ字等種々な文字で表現されることは、あらためて説明するまでもあるまい。

 従つて、本願商標は、まさに商標法第三条第一項第四号に該当する世上一般にゆきわたつて知られた氏姓を普通の方法で表示するだけのものであつて、自他商品の出所識別機能に欠けるものといわねばならず、審決の判断は相当である。

三、以上の次第であるから、原告の本訴請求は理由がなく、棄却せざるを得ない。

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