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【管理番号】第1103170号

【総通号数】第58号

(190)【発行国】日本国特許庁(JP)

【公報種別】商標審決公報

【発行日】平成16年10月29日(2004.10.29)

【種別】無効の審決

【審判番号】無効2003-35473(T2003-35473/J3)

【審判請求日】平成15年11月17日(2003.11.17)

【確定日】平成16年8月23日(2004.8.23)

【審決分類】

T111 .262-Y  (Y01)

T111 .263-Y  (Y01)

【請求人】

【氏名又は名称】日産化学工業株式会社

【住所又は居所】東京都千代田区神田錦町3丁目7番地1

【代理人】

【弁理士】

【氏名又は名称】萼 経夫

【代理人】

【弁理士】

【氏名又は名称】館石 光雄

【代理人】

【弁理士】

【氏名又は名称】村越 祐輔

【被請求人】

【氏名又は名称】昭光通商株式会社

【住所又は居所】東京都港区芝公園1丁目7番13号  昭和電工別館

【代理人】

【弁理士】

【氏名又は名称】佐々木 功

【代理人】

【弁理士】

【氏名又は名称】川村 恭子

【事件の表示】

 上記当事者間の登録第4701643号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

【結 論】

 本件審判の請求は、成り立たない。

 審判費用は、請求人の負担とする。

【理 由】

1.本件商標

 本件登録第4701643号商標(以下「本件商標」という。)は、平成14年12月9日に登録出願され、「一発らくらく」の文字を標準文字で書してなり、第1類「肥料」を指定商品として、同15年8月15日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

 

2.請求人が引用する商標

 請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第1975488号商標(以下「引用商標」という。)は、「らくらく」の平仮名文字を横書きしてなり、昭和60年7月10日に登録出願され、第2類「肥料」を指定商品として、同62年8月19日に設定登録、その後、平成9年5月27日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

3.請求人の主張

 請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第39号証(枝番含む)を提出した。

(1)請求の理由

 本件商標と引用商標とは前記したとおり、「らくらく」の平仮名文字を共通にしてなるところ、前者は当該文字の前部に異なる字体の「一発」の漢字を結合して構成されるものである。

 しかして、漢字と平仮名文字との結合商標は、異なる字体で二つに分離され一体不可分ではなく、また、本件商標には、その構成文字全体を常に一体不可分のものとして把握しなければならない事情もない。

 よって、本件商標は、「らくらく」の平仮名文字が分離して観察される結果、引用商標と類似するものである。

 かかる判断は、甲第3号証ないし甲第33号証(枝番含む)に示す審決例に徴しても明らかである。

 また、商標「シートダイヤル」(甲第34号証の1及び2)について、商標「一発シートダイヤル」(甲第35号証の1及び2)がかって連合商標として登録された先例が存在する。

 かかる先例は、片仮名文字よりなる商標と、これの前部に異なる字体の「一発」の漢字を結合してなる商標とが類似のものであるとの判断を示している。このことは、「らくらく」の平仮名文字を共通にし、これの前部に結合する「一発」の漢字の有無をもって差異とする本件商標「一発らくらく」と引用商標「らくらく」との類否判断にも充分妥当すべきものである。

 したがって、本件商標と引用商標とは類似とされるべきものである。

 さらに、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは同一である。

 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とされるべきものである。

(2)答弁に対する弁駁

 本件商標を構成する「一発らくらく」の文字は、「一回、ひとつ」等を意味する「一発」の漢字と「安楽なこと、たやすいさま」等を意味する「らくらく」の平仮名文字との結合商標であると容易に認識されるものである。

 また、「一発」の文字は、その用例として「一発やってみよう」「一発金儲けをたくらむ」等の副詞的に用いて副詞を修飾する語であるため、続く文字を修飾する語として理解されるものである。

 そのため、本件商標は、構成中の「一発」の文字が、「らくらく」の文字を修飾する語として理解されるに止まり、簡易迅速を旨とする商取引の場にあって、「一発」の文字部分を省略し、単に「らくらく」の文字を捉え、これより生ずる「らくらく」の称呼及び「楽楽」の観念を生ずるものである。

 また、本件商標は、漢字と平仮名文字で構成されているため、視覚的にも分離され、「イッパツ」と「ラクラク」と分離して称呼されるばかりでなく、見やすい仮名文字「らくらく」の文字に注意が集中し、「ラクラク」のみの称呼をも生ずるものである。

 

4.被請求人の答弁

 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証を提出した。

(1)本件商標は上記構成よりなるところ、一般に、前半の「一発」は「a)弓・銃などを一度射たり打ったりすること。また、その矢・弾丸。b)一丁。ひとつ。思い切ってやってみる場合にいう。c)野球で、ホームランのこと。」の意味を有する語であり、また、後半の「らくらく」は「a)ゆったりとしていて気楽なさま。b)たやすく物事を行うさま。やすやす。」の意味を有する語であるが、「一発らくらく」は指定商品「肥料」との関係では特定の観念を有しない被請求人の採択に係る造語であって、その構成に相応して「イッパツラクラク」の称呼が生じ、しかも、それはよどみなく一気に称呼することができるものである。

(2)被請求人は、商品「化成肥料」を「一発らくらくPKS」(なお、「PKS」の文字はそれぞれリン酸・加里・けい酸を意味するものであり、単

なる成分表示にすぎない。)の商標及び「イッパツラクラク」の称呼により、平成14年12月から現在に至るまで継続して製造・販売している。

 すなわち、被請求人は、平成14年12月10日に、「光熔成けい酸加里入り化成肥料22号」について肥料取締法第7条の規定に基づく登録を得て(登録番号:生第83315号)生産し、「一発らくらく」を要部とする商標で販売を開始した(乙第1号証)。なお、被請求人は、関東電工株式会社から倉賀野工場及びその生産設備を賃借し、昭光通商(株)高崎工場として肥料を生産している(乙第2号証)。

 具体的には、2002年度においては、上記登録を得た直後にサンプルを生産し、顧客等に配布した程度だが、2003年度からは本格的に生産を開始し、明田商事(株)、(株)大阪屋商店等に対して、合計755袋、15.1トンを出荷した。本年(2004年)度においても、2月からの水稲向け元肥用として拡販中である(乙第3号証)。

 乙第4号証は被請求人の生産販売に係る「化成肥料」を封入している20kgポリ袋であるが、表面には大きく「一発らくらく」を要部とする商標が表示されている(乙第5号証及び乙第6号証)。

 乙第7号証は顧客等へ配布しているチラシであるが、これにも大きく「一発らくらく」を要部とする商標が表示されている(乙第7号証及び乙第8号証)。

 このように現実には、被請求人に係る「化成肥料」は「一発らくらく」を要部とする商標及びこれに相応して生ずる「イッパツラクラク」の称呼をもって取引が行なわれている。

 以上より、本件商標からは、その構成に相応して「イッパツラクラク」の称呼が生ずるものである。

(3)これに対し、引用商標は請求人が所有しているものであり、「らくらく」のひらがな文字を横書きしてなるところ、その構成に相応して「ラクラク」の称呼が生ずるものである。

 また、引用商標からは「ゆったりしていて安楽なようす。非常にたやすいようす。」の観念が生ずるものである。

(4)本件商標と引用商標との比較検討

 a)まず、本件商標と引用商標とは、その構成において顕著な差異を有するものであることから、外観上十分に区別し得るものである。

 b)また、本件商標から生ずる「イッパツラクラク」の称呼と引用商標から生ずる「ラクラク」の称呼とは、「ラクラク」の称呼を共通にするものの、前半における「イッパツ」の称呼の有無という顕著な差異があることから、明確に聴別することができるものである。

 c)なお、上述の通り、引用商標からは「ゆったりしていて安楽なようす。非常にたやすいようす。」の観念が生ずるものであるが、本件商標は特定の観念を有しない造語であることから、観念については比較の対象とはなり得ない。

(5)さらに、被請求人は、上述の通り、現に「一発らくらく」を要部とする商標を使用した商品を継続して販売しているが、引用商標との関係で商品の出所の混同が生ずるような事態は全く生じていない。

 

5.当審の判断

 本件商標は、その構成前記したとおり「一発」の漢字と「らくらく」の平仮名文字を標準文字で書してなるところ、横一体に書されてなり、これより生ずる「イッパツラクラク」の称呼もそれ程冗長なものとはいえず、淀みなく一連に称呼し得るものであって、たとえ漢字で書された「一発」には、一度、一回、一つなどの意味合いがあり、「らくらく」の平仮名文字は、漢字の「楽楽」に通じ、これよりゆったりしていて安楽こと、たやすいさまなどの意味合いを生ずるとしても、かかる構成においては全体として特定の意味合いを想起させない一種の造語を表したものとみるべきであって、構成全体より「イッパツラクラク」の一連の称呼のみを生じるというのが相当である。

 他方、引用商標は、「らくらく」の平仮名文字を書してなるものであるが、これをことさら「楽楽」の漢字に置き換え、ゆったりしていて安楽こと、たやすいさまなどの意味合いを生ずるものと理解するというよりは、かかる構成においては全体として一連の造語を表したものとみるのが自然であり、構成全体より「ラクラク」の称呼を生じ、特定の意味合いを有しない造語というのが相当である。

 そこで、本件商標より生ずる「イッパツラクラク」の称呼と、引用商標より生ずる「ラクラク」の称呼とを比較するに、両者は前半部における「イッパツ」の音の有無に顕著な差異を有するものであり、称呼上十分に区別し得るものである。

 さらに、本件商標と引用商標とは、特定の観念を生じ得ない造語と判断されるとみるのが相当であるから、両者は観念上比較し得ないものであり、それぞれの構成よりみて外観上も十分に区別し得るものである。

 そして、他に両商標が類似するという事由を見出し得ない。

 してみれば、本件商標と引用商標とは、その称呼、観念及び外観のいずれにおいても区別し得る非類似の商標といわざるを得ない。

 なお、請求人はその主張を裏付けるために過去の審決例や登録例を提出しているが、これらは、本件無効審判とは事案を異にするものであるから、この点に関する請求人の主張は認め難いところである。

 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものということはできないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

 よって、結論のとおり審決する。

【審理終結日】平成16年6月25日(2004.6.25)

【結審通知日】平成16年6月29日(2004.6.29)

【審決日】平成16年7月12日(2004.7.12)

【審判長】 【特許庁審判官】山田  清治

【特許庁審判官】小林  薫

【特許庁審判官】岩崎  良子

 

(210)【出願番号】商願2002-103883(T2002-103883)

(220)【出願日】平成14年12月9日(2002.12.9)

(111)【登録番号】商標登録第4701643号(T4701643)

(151)【登録日】平成15年8月15日(2003.8.15)

(561)【商標の称呼】イッパツラクラク

【最終処分】不成立

【前審関与審査官】鈴木 雅也

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