top of page

裁判年月日 昭和 3年 9月11日 裁判所名 大審院 

事件番号 昭3(オ)458号「乾燥用旋回座網」事件

事件名 実用新案登録無効審判請求事件

 

 被上告人の本件請求の要旨は本件登録実用新案の所有者たりし訴外甲はその登録出願前乙その他のものにその考案を説明したる事実ありて既に本件登録実用新案はその登録出願前帝国内において公知に属し新規性を欠きたるものなればその登録は無効たるべきを以てこれが無効審判の請求をなすと云うにあり。しかして上告人の答弁の要旨は本件登録実用指南の所有者訴外甲はその登録出願前その考案の内容を他人に説明し公知となりたる事実あることなし。仮にその考案を2、3の者に説明したることありとするもおよそ単に資金を求むるが為これを内示したるに過ぎざるを以てその事実のみを以て直ちに公知の状態に置かれたものとなすを得ざるが故に本件請求は失当なりというなり。

 原審は本件登録実用指南の所有者甲はその登録出願前2,3の者にその考案を説明して資金の供給を求め又は将来考案品の販売方の後援を依頼したる事実あることを認定しこの事実により本件考案がその出願前帝国内において公然知られたるものと判定し、本件登録を無効なりと審判したり。

 (中略)本件実用新案登録出願以前に同一若しくは類似のものが公然しられた事実なし。公然これを認識したる者の多数人なると2、3の者なるとはこれを問わずといえども少なくとも広範的に世人の認識し得べき状態に公然置かれたるを要す。「たとえ数人といえど公然知り若しくは公然用いるにおいては公知公用たるべく、多数人といえどその知り若しくは用いることが秘匿なる場合には公知公用に非ず。」とは大審院判例のことに明示せらるるところなり(大審院大正8年(オ)第788号)。(中略) 証言により明らかなる如く2、3の者に考案品の説明を為したればとて公然知られたるや或いは隠避の間に話したるや判断するに由なし。

bottom of page