私の本箱
「工業所有権法逐条解説」(いわゆる青本)
(著者) (特許庁編)
(出版社)社団法人発明協会
(内容)
①工業所有権法の立法に関わった特許庁が工業所有権法(特許法・実用新案法・意匠法・商標法)を条文毎に解説した本です。
②この法律の分野では最も基本的な書籍であり、特に規定の趣旨の把握に必須です。③条文中に使用されている用語に定義が記載されており、それらは規定の趣旨を理解する上で非常に重要なものです。
③「工業所有権法逐条解説」には、法律の改正の変化の過程が記載されており、それは立法趣旨を理解する上で重要です。
④さらに工業所有権法には、旧法(大正10年法)との関係が書いてあり、それは現行法の特色を知る上で役に立ちます。
(所見)
「工業所有権法逐条解釈」は、読み手にとって“怖い”本です。
読み手の実力が試されるような本であります。
全くの初心者は、まず「工業所有権法逐条」を読んで制度内容を理解します。一通りの勉強をして大体制度趣旨を理解した、「工業所有権逐条解説」のような初心者用の本は卒業だと思うのであります。しかしそれがとんでもない間違いであると、他の学習者との競争の中で思い知らされるのであります。
比喩的な表現を用いると、この本は、学習者の実力を表す合わせ鏡です。
1の実力しか持たない人間には1~2の情報しか提供しないし、10の実力を持つ人間には10~20の情報を与える。これを知っていれば直ちにライバルと差を付くというような“ノウハウ”的な情報が記載されている訳ではありません。
「工業所有権法逐条」を読破して直ちに特許法を理解したという人は、そこからの進歩がありません。「工業所有権法逐条」は、そこに書かれていることの意味を考え抜く、そのための演習問題であります。自分で演習問題を解く前に回答欄の答えを見て“ああ、分かった”という人には本当の実力がつかないでしょう。それと同じです。
「工業所有権法逐条解説」の読み方として、最初から最後まで一気によむ“通読”という技法がありますが、それをするにも、今回は制度趣旨に重点を置こうとか、他法との関係(例えば特許法と意匠法との関係)を重視して読もう、パリ条約との関係を重視して読もう(パ条約と国内法との違いを考えよう)などと、読むたびのテーマを決めて取り組むなど、何かしらの工夫がないと、本当にこの書物を読んだことにはならないのです。